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黄色い帽子の小学生…その後

―平成生まれ初の成人式―

柳橋夕景今年も成人の日を迎え、晴れやかな笑顔が街に溢れる季節になりました。

昨年の事ですが、平成生まれの人が初めて成人の日を迎えた、2009年の成人式。とても冷え込んだ1月12日(月)でした。

古くからの知り合いのご近所さんから電話があり、息子さんが、成人式の後に友人たちと屋形船に乗りたいので予約取れますか?との問い合わせが一昨年中にありました。私たちが覚えているその息子さんは、腕白盛りの子供の頃。もう20才になると聞けば、今更ながら、月日の経つ早さに、驚いてしまいました。

幹事さんとなったその息子さんは、早めにみえて、打ち合わせに余念がありません。

小学生の頃、お父さんに連れられて何回か来たのを覚えている?などと、ついつい昔話を。

よく話を聞けば、全員、近所の小学校の卒業生で、担任の先生も一緒に乗船するとのことです。

思わず、「成人式の日にみんなに会えるなんて、一番喜んでくれると思う。先生冥利につきるなあ!」と話しますと、真剣な顔で、「先生、喜んでくれるでしょうか?」

「もちろん!みんなの成長した姿を、成人式のその日に見てもらうなんて、最高のプレゼントでしょう!」

きっぱり断言した私に「そうでしょうか…だといいのですけど」と照れくさそうに笑っていました。

しばらくしてみえた先生と話しているうちに、「その節は、お世話になりありがとうございました。」と言われました。

小学校3、4年生頃に、小松屋を訪れて、社会科見学をしていたとのこと。

そういえば、確かに覚えています。先生に引率されて黄色い帽子をかぶった24、5人の子供たちが、いろいろな質問をしました。

「船宿を自分でやるとしたら、どうすればいいんですか?」「船を運転するには、免許か何かいるんですか?」「船って時速何キロくらいスピードがでるんですか?」「船には、自動車のようにブレーキがついているんですか?」「屋形船の他に、川にはどんな船が通りますか?」

普段から、専門学校生や大学生たちが聞き取りに来ますが、小学生たちの思いがけない、なかなか核心を突いた質問に、私たちには、あまりにも当然過ぎて誰でも知っているものと思い込んでいても、川や船に携わってない人には、不思議な事柄もたくさんある事に気づかされました。可愛い子供たちの一生懸命さに、笑顔で答えたものでした。

その当時、児童数が少なかったため、一年生から六年生まで「ひとクラス」で上がってきたので、皆とても仲が良く、保護者たちも何かといえば集まるほど、和気藹々なのだそうです。

「やはり、ご縁があったのでしょうね。私は初めて屋形舟に乗るんですけど、さすが地元の子たちですよね、二十歳にして屋形舟に乗るなんて…」思わず、先生と声を合わせて言っていました。
「渋い!!」 ご家族にも、なんて粋な集まりなんだと感心されたそうです。

続々と集まってくる10数年前の元小学生たち。
成人式時の振袖姿から着替えて、パーティードレスのおしゃれな女性陣。
スーツもパシッと決まった男性陣。ちょっと驚いたのは、EXILEのメンバーのような男子が、今の増える以前のEXILEのメンバーくらい現れたことでしょうか。ピアス、ヒゲ、ドレッド…アツシ君のようなヘアースタイル等など…

「う〜ん、黄色い帽子の頃の面影は、ないなあ。」と、彼らを見ていると、大事な頼まれごとをされました。
そして、賑やかに屋形舟に乗り込んで出船して行きました。

口々に楽しかったと舟から降りてきた彼らに、出船前に頼まれていた物をそっと渡しました。

この集まりの解散時、先生に皆から渡すプレゼントのひとつ、花束です。先生に贈る前に、絶対気が付かれたくないとのことで、実は、小松屋の店の下に隠してあったのです。

花束みんなで先生を囲んで、寄せ書きをした色紙と花束を贈る彼らを見れば、10数年前の黄色い帽子の小学生の姿が浮かんできます。

先生も元小学生たちも、笑顔いっぱい拍手のうち、長い成人式の日は過ぎていきました。

幹事さんたちは姿勢を正しては「ありがとうございました。本当に良かったです。」と、何度も何度もお辞儀を繰り返しては帰っていきました。

あなたたちは、すてきです。成人の日を迎えられて、心から祝します。

おめでとう!

そして一年を過ぎ、就職活動も大変なこの世代。

そんな現在でも、いえ、今だからこそ、彼らの優しい気持ちが、大人として成長し続け、皆のこれからを明るく照らしていくだろうことを祈っております。

2010年1月8日

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