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このページでは舟宿にまつわるいろんなお話、屋形舟の歴史をご紹介しております。
不定期ではございますが少しづつ更新して参りますので、お楽しみください。ぜひご意見・ご感想などお寄せください。

大川風情

今年のお正月から、小松屋ホームページをリニューアルいたしました。
その最初のページには当店に残る、懐かしい写真をおいてみたのですが…ところで、この写真はどこだかお判りになりますか?

これは昔の大川(隅田川)の河岸の様子です。

今では、コンクリートの護岸やテラスになってしまいましたから、こんな風情ある景色は見ることができません。

―昭和二十四、五年のころ

小さい屋根舟が大川(隅田川)を上り下り。舟遊びのお客さんでにぎわっていた頃です。

料亭街だった柳橋から上流にかけて、川沿いにずらりと料亭が並び、その料亭さんには写真のように、張り出し桟橋が大川(隅田川)の上に出ていました。ここに、舟を付け、お客さんが川遊びに出ていたのです。先代の若い頃の話を聞けば、それこそ大川(隅田川)は、上り下りの舟人で賑わい、まるで江戸時代を思わせる風情だったと言うことです。昔は、そんな粋な遊びができたんですね。

この写真は、その料亭さんの張り出し桟橋を撮ったものです。引き潮の時は、このように川底があらわれるのです。

そんな頃のお話ですが、小松屋の先代が、屋根舟にお客様を乗せて白髭橋をくぐり、水神の森が見えてくるその一角にある「八百松」という料亭さんへ向かいました。そこで舟を付けお客様は降りて、その間、時間待ちをします。

すると、仲居頭(なかいがしら)のおせきさんが必ず出てきて「小松屋さんご苦労さん」と声をかけてから離れの座敷へ案内してくれ「一杯、どうぞ!」とすすめてくれたとのことです。

やがて「お客様がお帰りですよ」と声をかけながら仲居さんたちが三人ほど出てくると、それぞれ手に路地行灯を持って足下を照らし、桟橋の上まで送ってきます。

そして、そこへ並んで立ち、帰る舟を見送ってくれたそうです。

白髭橋のあたりまで下ってきて振り返ると、まだ彼女たちは行灯を振っており、その左右に揺れる灯りが目に焼き付いていて、離れなかったそうです。

そんな想い出から、先代が屋形船を復活させた頃、小松屋の路地行灯を用意しました。

先代の女将が、穏やかな舟遊びを願いつつ、路地行灯を振って送り出し、舟が桟橋に戻るときは、路地行灯を片手に舟を迎え入れ、お客様の足元を照らして桟橋を上がっていった時もありました。

屋形船復活の当時(昭和52年)は、街灯や川辺の灯りも少なく大川(隅田川)に乗り入れた屋形船からでも、ゆらゆら揺れる路地行灯の灯り(あかり)は見えたのです。

現在、柳橋もライトアップされましたし、街灯で夜でもすっかり明るくなりましたから、この路地行灯の出番もなくなりましたが、小松屋ホームページの入口を路地行灯にしたのは、このときの先代の良き想い出からです。

この懐かしい写真や路地行灯は、小松屋先代の思い出と、舟の安全を願い、おもてなしのこころを常に忘れず、持ち続けていきたいとの気持ちを表わしました。

これからも小松屋ともども、小松屋ホームページも舟遊びも、楽しんでいただければと願っております。

2008年2月15日

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