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このページでは舟宿にまつわるいろんなお話、屋形舟の歴史をご紹介しております。
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防災訓練

いざ、防災訓練へ出発九月は関東大震災があったこともあり、各地で大規模な防災訓練が行われます。

2006年9月3日、中央区の総合防災訓練に私ども神田川屋形船振興会も参加することになりました。

神田川沿いの小松屋を含む船宿9軒で組織する神田川屋形船振興会と地元の町会とで、今年に入ってから「災害援助協定」を結びました。
日常、生活の地盤を同じにしている地元の方々に、いざ災害発生という時に、何かお手伝いできないだろうかという考えからのことでした。

さすが自衛隊員の動きは違う今回、中央区の総合防災訓練は地元の日本橋中学校を防災拠点としています。道路を隔てて直ぐの隅田川の防災桟橋を使用して援助物資や負傷者の水上搬送を行いたいので参加してもらいたいとの要請を受けました。「訓練の一端を担えるなら喜んで参加させていただきます」と、実際に屋形船を使っての訓練となりました。

この総合防災訓練は、東京湾を震源とする大地震を想定し、中央区が中心となり、警視庁、東京消防庁、陸上自衛隊、中央区民など多数の団体や人員が参加する大規模なものでした。

訓練は午前9時より陸上で開始されましたが、ここでは水上での訓練の様子を追ってみます。

午前10時00分 箱崎へ向け柳橋桟橋を出発
午前10時30分 箱崎防災桟橋発
第七小松丸にて、救援物資及び中央区長、ボランティア等が乗り込み消防艇の先導のもと、桟橋を離れる
午前10時45分 浜町防災桟橋着
救援物資をトラックに積み込み、乗船者の下船。歩ける負傷者は自力で、歩行困難な負傷者は、担架にて船に運び入れる。医療機関に向かうために桟橋を離れる。
午前10時55分以降 隅田川にて
落水者の救助、放水訓練などが行われ、午前11時10分過ぎ、水上においての防災訓練は終了しました。
けが人を屋形船に運ぶ訓練

大勢の人々、関係者が待ち受ける浜町防災桟橋では、自衛隊員が直立不動で微動だにせず、担架を運ぶ時を待ち、消防署員が無線で屋形船の離岸を受け、回りに知らしめたり、訓練とはいえ、中々の緊迫感がありました。消防艇を先頭に、屋形船2隻と水上スクーター、何隻もの消防艇が現れるとどよめきが上がり、第七小松丸が着岸すると順序よく、救援物資の積み下ろし、負傷者の乗船が行われ離岸していきました。

陸上から見ていて思ったことは…

人が救援物資を腕いっぱいに抱えて降りていましたが、足元が見えない状態で一般の人が降りる様子には、冷や冷やしてしまいました。

落水者発見!消防艇で救助
落水者を水上スクーターで救助!
放水!隅田川の水しぶき

できれば、船と桟橋での荷物の手渡しを先に行い、手ぶらで人間は降りるようにしたほうが安全だと思います。訓練ではなく、実際に大事が起これば、ほとんどパニック状態が予想されます。船は、風に拠っても潮の流れに拠っても、引き波に拠っても、当然揺れます。普段船の乗り降りに慣れていない人には、危険な場合もあり得るからです。この点だけは、安全第一に考えていただきたいと思います。

その後、もう1隻の屋形船から一人ずつ、2名の落水者。もちろん消防庁署員の迫真の演技です。

水上スクーター、消防艇での救助があり、実際の救助活動を目の当たりにし、皆真剣に見ていました。水上スクーターで救助に活躍された方は、スクーターの定員があるためか、ずっと水中をバウンドしながら去っていき、これには誰もが「痛そうだね。」と話していました。

小回りがきき、スピードも速いスクーターならでの救助、消防艇での迅速なる救助に、さすがとの声が上がります。この救助活動が行われることは、もちろん知っていましたが、当然のことながら、突然の転落ですので、かなり迫力あるものでした。

そして、放水訓練。
陸上からも、川をいく三隻の消防艇からも高々と放水されます。風下にいた人々からは、一斉に「わぁー」と声が…高々と舞い上がる隅田川の水しぶき。カメラを濡らさないため、慌てて退散しましたが、それでも結構、頭から濡れてしまいました。

次は、実際に訓練に参加した屋形船での話を付け加えさせていただきます。
私たちも初めての試みでしたが、訓練とはいえ現場を体験できたことは、大変有意義だったと思います。
やってみないと分からないことがある。痛感しました。

◎指揮系統の確立

事前に数度の打ち合わせを行い当日の行動は確認済みでしたが、いざ桟橋出発の段階で「すぐ、出発してください。」「もう1隻の準備がすむまで待ってください。」など、乗り込んでいた別々の組織の方から違う指示があり多少の混乱がありました。指揮系統の一本化と、指示の伝達口を一つにすることで混乱は解消できるのではないかと思いました。

◎防災施設の利用について

一回目の打ち合わせで、今回、参加した神田川屋形船振興会の鈴木屋・小松屋が要望した事が一つだけありました。訓練の時間に合わせて防災桟橋のある両国橋〜清洲橋間を航行する船舶に徐行運転を指導しほしいという事でした。

日常は、この桟橋を使用しての乗客の乗降を行うことはないのですが、屋形船の上から、防災桟橋が通る船の引き波で大きく上下にいつも揺れているのを見ています。

水上訓練を伝える新聞記事
訓練の様子を伝える新聞記事
(9月4日読売新聞)

そのため、桟橋に係船した場合、船と桟橋がぶつかった時の衝撃はどの程度か、また、人が乗降するのに支障が無く、足を挟むなどの二次災害の恐れがないかなどと、懸念してのことです。当日、桟橋台船に乗って、徐行した船の引き波でも思った以上に揺れが激しいので驚かされました。

隅田川に限らず防災桟橋は東京各地にあります。引き波の問題だけでなく、橋が低くて通れない、水位が低くて船が入れないなど各桟橋の状況も把握しておく必要もあると思います。

訓練のためだけの設備ではないのですから、日常的な使用も視野に入れて、 防災設備、場所の使用にも慣れておくことの必要性を感じました。

日頃から、防災に対しての心構えを常に持って、助け合う気持ちを忘れずにしていきたい。そう、感じさせる一日でした。

2006/10/01

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